著者: | 間々田 孝夫 [編] |
ISBN: | 978-4-901988-27-8 |
判型: | A5判上製 |
刊行: | 2015年3月 |
定価: | 3,300円+税 |
現代の消費者はどう行動しているのか
「多様化する消費生活に関する調査」の多角的な分析と理論研究の成果を問う
間々田 孝夫
日本では、1990年代初めまで、バブル経済の時代を中心として、過剰なまでに華やかな消費社会が実現されていた。しかしその後は長期にわたる経済不況に悩まされ、消費の停滞が目立っている。その影響によるものか、消費社会の研究自体も最近では停滞気味である。
しかし、この間、消費社会は決してその変容を止めることはなかった。
1980年代半ばには、地球環境問題が大きな関心を呼ぶようになり、このままの消費ではいけないという風潮が次第に広まっていった。1980年代から始まっていた情報革命は、1990年代に、インターネットの発達や携帯電話の普及という形で爆発的に広がり、人びとの消費欲求を情報消費へと大きくシフトさせていった。
また、アメリカを中心にした消費合理化の動きは、20世紀後半を通じて継続し、ファストフードや大型ショッピングモールが爆発的に増加し、世界中に広がっていった。
グローバルな動向に目を向けると、一方では画一化、共通化の動きが広がったものの、他方では、世界各国の消費文化が各国で受け入れられるようになった。
他方、世界情勢の不安定、高度化する科学技術などがさまざまな新しいリスクを生み出し、先進諸国はリスク社会と呼ばれるようになった。
そして、バブル経済崩壊後、消費の量的停滞、特に物的消費の停滞は予想外に長引いている。「若者の消費離れ」が何年か前から取り沙汰されるようになり、また、モノ消費からコト消費へという変化がしばしばリアリティをもって語られている。
以上のように、消費社会は決して動きを止めてはおらず、むしろ大きく変化している。
本書は、そのような動きを視野に入れた、若手研究者中心の共同研究の成果をまとめたものである(研究にあたっては文部科学省科学研究費の補助を受けた)。
本書では、フェアトレード、グリーンコンシューマリズム、消費の公共的配慮、消費主義(消費に強い関心をもつ生活態度)、消費への社会的地位や友人関係の影響、リスクの類型、それへの対応など、八つの章にわたって盛りだくさんのテーマについての分析がなされている。各章はそれぞれ現代消費社会の新局面を捉えようとしたものであり、編者は、近年研究成果の乏しい消費社会研究の分野で大きな意義をもつと確信している。
本書の分析にあたっては統計学的な方法を使っているが、統計学に詳しくない読者でも理解できるように工夫されているので、この分野に関心のある方は、ぜひ一度目を通していただければ幸いである。