ロボットと〈日本〉
近現代文学、戦後マンガにおける人工的身体の表象分析

ロボットと〈日本〉 近現代文学、戦後マンガにおける人工的身体の表象分析
著者: 山田 夏樹 [著]
ISBN: 978-4-901988-23-0
判型: A5判上製
刊行: 2013年3月
定価: 4,200円+税

手塚治虫、横山光輝、梶原一騎、藤子不二雄、中上健次、村上龍、村上春樹など戦後日本を代表する漫画家、作家による作品を取り上げ、ロボットとサイボーグなどの人工的身体の表象分析を通じて、進展していくテクノロジー環境のなかで、身体感覚がどのように変容しているのかを読み解く。マンガにおいては、登場人物がどのように性、死、内面、成長などの身体性をもちうるのか否かを、また作家においては、〈偽史〉という〈物語〉にどう対応していったかを中心に論じる。

自著を語る

山田 夏樹

 本書は、原子力の存在に象徴されるように、戦後、進展していくテクノロジー環境の中で、身体感覚がどのように変容しているのかということについて論じていくものである。
  内容は二部構成となっており、両者の議論を繋ぎ、また貫く問題性が、歴史、社会的イデオロギーといった〈国民〉に共有される〈大きな物語〉の機能との関わりである。科学信仰などの〈大きな物語〉は、戦後から60年代にかけて強い影響力を有し、また、70年代以降に徐々に機能を低下させていく。その中で、近現代文学および戦後マンガにおいて描かれ続けていくロボット、サイボーグなどの人工的身体の意味がどのように推移しているのかという問題性を分析していくことで、テクノロジー環境における身体感覚の変容を読み取っていく。
  具体的に、第Ⅰ部「〈大きな物語〉と人工的身体――〈記号の身体〉/〈生身の身体〉の流動性」では、手塚治虫、横山光輝、梶原一騎、藤子不二雄Ⓐ、藤子・F・不二雄など戦後を代表するマンガ家、原作者の作品を対象とし、そこで描かれているロボット、サイボーグなどの人工的身体の表象分析を行う。そしてそのことにより、簡素な表現であるマンガにおいて登場人物がどのように性、死、内面、成長などの身体性を持ち得るのか、または持ち得ないのかという問題性を時代の変遷とともに検証していく。
  次に第Ⅱ部「〈偽史〉と人工的身体――アメリカ、アジアの中の〈日本〉」においても、やはりロボット、サイボーグなどの人工的身体の表象分析を軸としていく。そしてそのことにより、中上健次、村上龍、村上春樹など近現代文学を代表する作家が、1980年代以降に数多く展開されるようになった〈偽史〉という所謂〈正史〉とは異なる〈物語〉にどのように対応していったのかという問題性を検証していく。

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