イングランド宗教改革の社会史
ミッド・テューダー期の教区教会

イングランド宗教改革の社会史 ミッド・テューダー期の教区教会
著者: 山本 信太郎 [著]
ISBN: 978-4-901988-14-8
判型: A5判上製
刊行: 2009年3月
定価: 3,800円+税

国王ヘンリ8世のいわゆる離婚問題をきっかけに成立したイングランド国教会。それゆえにこそ、その後、イングランド宗教改革は激動のミッド・テューダー期を経験した。そこに生きた人々の宗教生活と政府の宗教政策が交錯する場である教区教会に、丹念な資料の読み解きによって分け入った労作。

自著を語る

山本 信太郎

 イングランドの宗教改革は、いわゆる宗教改革の歴史において、例えば高校の世界史の教科書の中でも添え物のように扱われてきた。教科書で言及されるイギリス宗教改革、すなわちイングランド宗教改革は通常、ルターとドイツ語圏の宗教改革、そしてカルヴァンの宗教改革の後に、「国王の離婚問題に始まった」ものとして、宗教改革の亜種のように扱われる。なお、16世紀半ばの「イギリス」では、イングランドとスコットランドは全く別の王国であり、スコットランドの宗教改革はイングランドとは別の過程を辿ったので、本書の対象としては一貫してイングランドという呼称を用いている(ウェールズやアイルランドも同様に対象外である)。
 今年、2009年は宗教改革者ジャン・カルヴァンの生誕500周年ということで、日本でもカルヴァン関連の出版が相次いでおり、それにちなんだ催し物も開催されている。他方、1509年は、イングランド国教会成立の直接の契機となった国王ヘンリ8世がイングランド王に即位した年でもあるのだが、そのことが顧みられることはない。同様に、イングランド宗教改革を扱った日本語の単独の書物もこれまでほとんどなかった。一般読者の目に触れることの少ない研究雑誌の論文などを除けば、先駆的な書物としては八代崇氏の2冊の研究書が挙げられるだけであろう(『イギリス宗教改革史研究』創文社、1979年・『イングランド宗教改革史研究』聖公会出版、1993年)。
 本書は、一般に国王ヘンリ8世の離婚問題(カトリック教会では正式には離婚を認めないため、正確には「結婚解消」である)に始まったために、「政治的な宗教改革」として描かれることが多かったイングランド宗教改革が、普通の人々が宗教生活を営んだ教区教会という場にどのような経験をもたらしたか、ということを明らかにしようと試みたものである。ミッド・テューダー期と呼ばれる16世紀中葉の時期は、国王が短期間に入れかわるとともに、国家の宗教体制もプロテスタントからカトリック、そしてまたプロテスタントへと目まぐるしく変化した。そのような激動の時代に人々の礼拝の場である教区教会はどう変わったのか、そして、成立直後のイングランド国教会はどのような教会だったのか。日本語で読める数少ないイングランド宗教改革の書物として、また、当時の人々の身近な存在であった教区教会を描いた社会史として、本書に興味を持って頂ければ幸いである。
 最後に、まだまだ駆け出しの研究者である筆者の拙い成果を、こうして美しい本(この点は筆者の功績ではないので大いに主張しておきたいが、本書の書物としての「作り」は近年の出版事情を考えれば、大変贅沢で立派なものである)にまとめて世に問う機会を与えて下さった立教大学出版会に心からのお礼を述べておきたい。

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