オペラ・パロディの世界
もう一つのオペラの愉しみ

オペラ・パロディの世界 もう一つのオペラの愉しみ
著者: ウィーン民衆劇研究会 [編訳]
ISBN: 978-4-901988-09-4
判型: A5判上製
刊行: 2007年3月
定価: 3,800円+税

「もう一つのオペラ」が見えてくる!! オペラ・パロディ=民衆オペラは、特権階級に独占されてオペラの持つ魅力をわかりやすく民衆に伝え、新しい世界を発見させてくれる「魔法の壷」である。民衆オペラの駄洒落、語呂合わせ、言葉遊び、替え歌などに挑み、19世紀ウィーンの演劇的祝祭空間に迫った苦心の翻訳集。

自著を語る

小松 英樹

 本書はほぼ30年前の1978年に立教大学独語独文学教室のメンバーを中心に発足したウィーン民衆劇研究会が、営々として積み重ねてきた研究会活動の集大成として、世に送り出した翻訳集兼解説書です。ウィーンは言わずと知れた音楽と演劇と舞踏の都です。そこではありとあらゆる舞台芸術が妍を競い、人々を楽しませてきましたし、現に楽しませています。特にウィーン民衆劇と呼ばれる、一般市民、いわゆる庶民を観客とする独特のジャンルが18・19世紀にかけてめざましく発展し、宮廷演劇、オペラに抗して独特の隆盛をみたところに特徴があります。
私たちはこれまでに、ウィーン民衆劇の完成者といわれたネストロイ(1801-62)の主要作品を集めた『ネストロイ喜劇集』(行路社、1994)と、ウィーン民衆劇の巨匠フェルディナント・ライムント(1970-1836)の『ライムント喜劇全集)(中央大学出版会、2000)を出版してきました。本書はそれらに次ぐものです。今回のモーツアルトの『魔笛』、ウェーバー「魔弾の射手」、マイヤーベーアの「悪魔のロベール」、フロートーの「マルタ」、そしてワーグナーの「タンホイザー」と「ローエングリーン」という有名なオペラのパロディ版を集めました。「魔笛」はカール・マイスル作、「魔弾の射手」はユーリウス・ホップ作で、後の4作はネストロイによるものです。いずれも原作の筋を忠実にたどりながらも、随所で原作の換骨奪胎が行われ、人物たちは意外な欠点を持つ普通人に格下げされています。観客たちは自分たちと等身大な主人公たちに共鳴し笑い飛ばす仕組みです。そこに見えるのはしたたかで健全な市民階級の確かな批判精神、生を愉しもうとする積極的で、やや享楽的な人生観といえます。
ウィーンの民衆劇の歴史を俯瞰しつつ、その位置づけを明確にした、簡にして要を得た概説(まえがき)と、各作品についての親切で詳しい解題、そして研究会の沿革について語ったあとがきを付した本書は、読者の好みと興味の濃淡に応じて、ウィーン民衆劇、とりわけそのパロディの世界へ案内する恰好の手引き書となっています。オペラ・パロディの真髄を是非一度味わってください。

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