著者: | ユネスコ [著]/ 阿部 治・野田 研一・鳥飼 玖美子[監訳] |
ISBN-10: | 4-901988-06-9 |
ISBN-13: | 978-4-901988-06-3 |
判型: | B5変型判上製 |
刊行: | 2005年3月 |
定価: | 7,600円+税 |
ユネスコの提唱する「持続可能な未来」が本書を貫くキーワードである。資源浪費の現在の生活スタイルはどこから改めるべきか。21世紀の環境問題を正面から見据え、地球的に考える指針を平易に説いた、環境教育のグローバル・スタンダード。
阿部 治(他)
地球温暖化に象徴される深刻な環境問題の顕在化や貧富の格差といった社会的不公正の拡大など、現代社会はあらゆる分野で持続不可能となってきた。環境、経済、社会のバランスを考慮し、持続可能な社会の実現をめざす「持続可能な開発」の実現なくしては、人類の未来はない。持続可能な開発とは「将来世代が生きていくための選択肢を奪わない範囲内で、現世代の必要物を充たすための開発」と定義されている。もっと簡単にいえば「子孫のために資源を使い切ることのない社会をつくること」であり、そのために環境問題は勿論、平和、貧困などの問題にしっかり対応することである。開発が進んでいる日本では「持続可能な開発」より「持続可能な社会(や未来)」のほうが理解しやすい。
92年の地球サミット以降、「持続可能な開発」の実現に向けて様々な取り組みが展開されてきた。しかし、残念ながら持続不可能性はますます進行し、持続可能な開発の視点に立ったあらゆるレベルでの意識改革、すなわち教育・学習が緊急の課題であることがいよいよ明らかとなってきた。持続可能な開発に向けた教育・学習の動きは、80年代の地球環境問題の顕在化によって始まった。地球環境問題は、環境のみならず、貧困や識字、開発、女性差別、人権、平和、保健・衛生といった諸問題が複雑にからみあって発生している。このため環境教育や開発教育、人権教育といった国際的課題に対する従来からの教育活動だけでは対応できない。その結果、これらの取組を総合的に行うことが、持続可能な未来(あるいは開発など)のための教育(や学習)として始められたのだ。そして本年1月から始まった持続可能な開発のための教育の国連の10年として国際的に推進されている。
本書は国連教育・科学・文化機関であるユネスコが持続可能な開発をあらゆる教育・学習の中心に位置づけることを意図して02年に開発した教員研修用のテキストである。内容は前述した持続可能性にかかわる膨大な基本文献を解説し、持続可能な社会の基本情報を提供した上で、持続可能な開発のための教育・市民教育や消費者教育などの最新情報、持続可能な開発と女性、農業、観光、文化などの具体的テーマを豊富な事例をもとに解説している。この分野の解説書としては量・質共に極めて充実した我が国初の解説書である。現職教員はもとより、環境教育や開発教育など持続可能な未来にかかわるあらゆる教育関係は勿論、NGO、研究者、市民、行政関係者、企業のCSR担当者などのバイブルとして役立つことは間違いない。