海洋観光学入門
マリーンツーリズムの開発・影響・管理

海洋観光学入門 マリーンツーリズムの開発・影響・管理
著者: マーク・オラムス [著]/石井 昭夫[訳]
ISBN-10: 4-901988-02-6
ISBN-13: 978-4-901988-02-5
判型: 四六判上製
刊行: 2003年3月
定価: 2,200円+税

海洋観光の開発と管理の問題点を生態系と調和させつつ事例に即して明らかにし海洋環境が現代人に与える心理的効果を説く達意の翻訳書。

自著を語る

石井 昭夫

 今日の世界では、国際観光だけで年間六億人以上の人が旅行しています。国内観光客を含めれば、その数倍になるでしょう。これほど大量の人の移動が世界各国の政治、経済、文化、社会、環境に及ぼす影響は巨大であり、観光学とは、まさに大量の観光行動によって生じる多様な問題を認識し、分析し、対応策を考究することにほかなりません。
 観光以外に地域振興の道がない国や地方もたくさんあり、観光のプラスの効果を求めて、健全な観光開発のあり方や、観光地、関連産業分野のマーケティングをめぐって研究が進んでいます。しかし観光は二十一世紀を代表する産業といわれるまでに成長しましたが、その一方で、負の効果も顕著に現れるようになっています。とくに近年では、観光客がいなければ環境が悪化することのない山岳僻地や海洋の孤島にまで観光客の足が及ぶようになり、観光と環境の調和ある発展が真剣に求められています。開発が遅れ、自然環境が豊に残っているところほど、地域振興のために観光に頼らざるを得ない場所でもあるからです。
 本書は、海をテーマとする観光に焦点を当てています。人類は陸上の動物であり、海上や海中は、船をはじめとする何らかの装置や器具なしには生存不可能な環境です。マリーンツーリズムの発展は、ある意味で海洋レジャーの技術革新の歴史でもあります。たとえば、自給自足型水中呼吸装置スキューバーは、「海を、人を拒否する怖くて異質な世界から、近づきやすく楽しく、かつ魅力あふれる世界に変えた」(本書24頁)のであり、技術革新が技術革新を呼んで、海洋レジャーはますます広く、深く浸透しつつあります。しかし、海洋は、「人が今も無限大で際限のない資源の宝庫であると思いがちであるが、そうではなく」(本書まえがき)、陸地以上に繊細で傷つきやすいのです。
 これまでの観光研究の中で、マリーンツーリズムは、長い間、観光全体の枠組みの中で他と区別なく考察されるにとどまり、内陸の観光とは異なる海の観光そのものを主テーマとし、その発展の歴史から、開発、影響、管理の問題まで総合的に扱った本格的な研究書は、本書が初めての試みです。
 観光を学ぶ人たち、環境問題に関心のある人たち、そして、海のレジャーをエンジョイする人たち読んでいただければ幸いです。

一覧へ戻る

立教大学出版会

リサーチ・イニシアティブセンター

ページの先頭へ戻る

Copyright © Rikkyo University. All Rights Reserved.