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立教大学出版会

 
 
昭和一〇年代の文学場を考える
新人・太宰治・戦争文学
 

松本 和也 著

ISBN 978-4-901988-29-2
A5判上製
2015年3月刊行
定価 6,800円+税

 
アジア・太平洋戦争期と重なる昭和10年代の文学は、本当に不毛だったのか?特定の作家・作品・トピックにとどまらず、それらを取り囲む諸条件ごと同時代の視座から練りあげた問題構成に、メディア調査、言説分析、テクスト読解をクロスさせた成果!

『朝日新聞』(2015年5月10日朝刊情報フォルダー)で紹介されました。
【書評】『週間読書人』(2015年7月3日)に書評が掲載されました(評者:中川成美氏 立命館大学教授)。

 
 
     
 

自著を語る

 
松本 和也
   

 本書は、タイトル通り昭和一〇年代における文学場を考えるための議論を集めたもので、目次には芥川賞、私小説、日中戦争、報告文学(ルポルタージュ)、石川達三、小田嶽夫、太宰治(「女生徒」・「走れメロス」他)、石川淳、高見順、尾崎士郎、火野葦平、富澤有為男、田中英光、坂口安吾、そして森鴎外といったワードが並ぶ。
 それにしても、〝文学研究といえば作家・作品研究〟という見方は相変わらず根強い。それは多くの成果をもたらしてきたけれど、そうした枠組みからは見えづらく、考えにくい死角がある。個々の作品が発表当時どのように読まれたのか、その前提となった評価軸、作品に関わった多様なテクストや言説(との関係)、時局と文学を関連づけたメディアの動向、活発に論じられた文壇トピックが生みだす発想の檻、さらには文学活動を陰に陽に規定した歴史の力学──本書ではこうしたことごとを問題化するために「文学場」という概念を導入した上で考察を進めた。
 一連の議論をまとめるのは「昭和一〇年代」という期間である。アジア・太平洋戦争期と重なるこの時期については、これまでの文学研究において否定的な評価が大勢を占め、論及自体も少なかった。端的に、戦局ゆえの不自由さの中で収穫に乏しかった、とみなされてきたのだ。本書は、こうした研究状況に対する実践的な異議申し立てとして、「昭和一〇年代」に展開された文学活動の再検討を目指した。
 別の観点からも、「昭和一〇年代」を研究テーマとした動機を示しておきたい。
 ここしばらく、(文学を含めた)人文学への風当たりが強い。さまざまな局面でしきりに問われているのは、文学の有用性なのだけれど、それが何によって要請されているのかといえば、『ヒューマニティーズ 文学』(岩波書店、2012)の小野正嗣が正しく指摘する通り、市場の論理でしかない。ひるがえって、本書で検討対象とした「昭和一〇年代」の文学場においても文学(者)は時局の論理によって有用性──本書で用いた当時の言葉にすれば「社会性」──が要請されていたのだ。
 そうであれば、研究対象としての「昭和一〇年代」と現代とは、およそ無縁とはいえず、むしろ意義ある先行事例/ある種の反復ととらえることができる。その延長線上において、「昭和一〇年代」の文学研究とは、緊要の課題にして批評的な営為でもあるはずで、今回の出版を介して、少しでも多くの方に人文学──「昭和一〇年代」の日本文学研究に興味をお持ち頂ければ幸いである。

 

 


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