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立教大学出版会

 
 
台湾のエスニシティとメディア
統合の受容と拒絶のポリティクス
 

林 怡蕿[著]

ISBN 978-4-901988-25-4
A5判上製
2014年3月刊行
定価 3,800円+税

 
複数の民族とエスニック集団が共存する台湾。国民国家という枠組みのなかでエスニック集団のための多文化的メディアを求めて苦闘してきた台湾のエスニック・メディアの成立過程を丹念にたどり、放送メディアにおけるエスニシティとナショナリズムの相克矛盾の究明を通じて、エスニック・メディアがマルチ・エスニック公共圏を維持するメディアとなるに必要な条件とは何か、を探る。

 

 
【書評】
『週間読書人』(2014年8月29日)に書評が掲載されました(評者:宮島喬氏 お茶の水女子大学名誉教授)。
 
     
 

自著を語る

 
林 怡蕿
 
   

 本書は、「エスニック・メディアとはなにか」という素朴な疑問から出発し、その最大の特徴といえる多文化、多言語の側面に焦点を当て、その政治的意味合いを取り上げて研究したものである。「エスニック・メディア」を「エスニシティ」と「マスメディア」の二つの概念に分解して、その関係がはらむパラドックスを近代の国民国家やナショナリズム思想、公共圏、多文化主義などの理論概念から検討した。その際、台湾に事例研究の場を求めた。台湾は、17世紀からオランダ、スペイン、清朝、日本、そして国民党政権を含めた複数の政治勢力が入れ替わり進出してきた歴史をもち、かつ社会内部に複数のエスニック集団を抱えている社会だということに注目した。その複雑な歴史と社会関係を背景とした、エスニック・マイノリティによるメディアの形成過程とあり方を批判的に考察した。本書は序章と終章のほか、5章で構成されている。
 台湾社会では、原住民族のほか、漢民族としては大陸から移住して来た本省人(閩南人、客家人)と、戦後に国民党政府とともに渡来してきた外省人とに区別して捉えることができる。本書では、それぞれの集団間の支配/被支配の対抗軸の視点から検討し、構造的に整理した。筆者はとりわけエスニックと民族集団の主体性を重視する立場から、台湾社会を「多重民族・エスニック社会」と定義して捉えることにした。
 台湾社会における言語ヒエラルヒーの形成にとって決定的だったのは、90年代までの「国語政策」という単一言語政策ならびにそれを規範とした放送政策であった。それへの異議申し立てとして、1987年の戒厳令解除後、マイノリティ・エスニック集団による社会運動が活発化した。その事例として、1994年に草の根メディアとして非合法の状態からスタートしたエスニック・ラジオ局「宝島客家ラジオ」を取り上げ、「下からのエスニック・メディア」と位置づけた。そこで当事者のエスニック集団が興した草の根メディアが制度化されていく軌跡を考察した。次に、公式多文化主義の産物ともいえる「客家テレビ」と「原住民族テレビ」を対象とし、それらを「上からのエスニック・メディア」と位置づけ、番組内容、予算編成、放送制度の主流イデオロギーなどの側面から分析した。「上と下」からの検討を通して、放送制度とエスニシティをめぐる理念および思想上の矛盾相克、そして社会的統合の問題に迫った。放送制度というナショナルな枠組みのなかに置かれつつ、エスニシティとナショナリズムという思想の狭間で揺れ動くエスニック・メディアのリアルな姿を確認することもできた。本書が、エスニック・メディアの捉え方についてこれまでと異なる視点を提示し、豊かにすることができたとしたら幸いである。


 

 


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